横浜〜静岡 JRの無い旅

プロローグ

 平成14年2月に「横浜〜つくば各停バスの旅」を実行してから、路線バスの旅にはまってしまった。市町村の中だけを走るローカルバスを使って、長距離旅行をするという、あまりに場違いな利用法に自らが酔ってしまったのかもしれない。この年の8月には、めでたくJR全線完乗を果たし、とりたてJRに乗る必要も無くなった。それどころか、年々悪くなるJR東日本の客扱いに怒りを覚え、逆にJRに乗らないことに意地になっていった。仙台から実家への帰省の際には、高速バスを利用する。それもただ単に仙台〜新宿の「政宗号」に乗ってはつまらないから、わざわざ福島と郡山で乗り継いで「あぶくま号」に乗る(しかもその方が安い)のが定番コースとなった。
 さて、冬になると、我が家族は父方の実家である静岡に向かう。父は贅沢にも新幹線に乗るが金の無駄以外の何でもない。しかし在来線に乗っても、JR東日本の車両に延々揺られるのがオチである。たまには違う行き方をしたい。
 宮脇俊三さんの本に、「旅の終りは個室寝台車」(新潮文庫)というのがある。この中で「東京−大阪・国鉄のない旅」として、東京(新宿)〜大阪(難波)を、なんとJRを使わずに一日で行くという話がある。1982年9月のことである。20年が経ち、雑誌「旅」で、同様の旅を行おうとしたが、静岡で挫折したらしい。宮脇さんらが利用した新松田〜沼津、沼津〜静岡のバスはことごとく廃止され、一般道を走るバスを乗り継いでも、由比駅の近く、寺尾橋で路線が切れてしまうらしい。同じ静岡県、同じ駿河の国にもかかわらず、寺尾橋と興津中町の間は、JR以外の公共交通機関が存在しないのである。どう頑張っても、JR以外の公共交通機関では、由比駅より西へは行けない。ずっとそう思っていた。
 ところが、JR時刻表を見ていて、意外な場所に公共交通機関を見つけた。土肥港〜清水港の駿河湾フェリーである。調べてみると、以前は土肥港〜田子の浦港を結んでいたのが、平成14年4月13日より現在の区間に改められたとのこと。土肥港〜田子の浦港では、いずれも由比駅より東であり、JRの無い旅には何ら意味が無い。ところが、清水港に区間が変更されたことにより、平成11年11月1日の、富士急静岡バスの寺尾橋〜興津駅入口の休止以来途切れていた、由比駅以西への非JRルートが開通したことになる。駿河湾フェリーは土肥港から清水港までわずか65分。JRを使わなくても横浜から静岡まで、一日あれば余裕で行けてしまうではないか。2月に小笠原に行って以来、船にもはまっている私としては、いてもたってもいられない。今年の暮れは、非JRでの帰省にしよう、そう決めた。

ルート選定

 行くとなったらルートを決めねばならない。JRを使わずに西へ行くためには小田急小田原線から箱根登山鉄道に入るのが常識的なルートである。問題は実家のある菊名からどうやって小田急にアクセスするかである。まっすぐに小田急に向かっていくとすると、まず新横浜駅まで徒歩で向かい、市営地下鉄に乗ることになる。市営地下鉄ではあざみ野までしか行けないからその先はバスとなる。あざみ野からは小田急バスと東急バスの新23系統、新百合ヶ丘駅行きがあるから、これに乗ることになるだろう。一方、鉄道だけで行くと考えるとまず東急に乗ることになるのだが、静岡に行くのにまさか渋谷方面に行くことはあるまい。横浜へ行くのが妥当だろう。ためしにインターネットの「ジョルダン乗換案内」で、横浜〜小田原を検索してみると、経路2として、相鉄〜海老名〜小田急のルートが出てきた。所要時間こそJRに劣っているが、運賃はJRより安い。距離は10km近く遠回りであるのにもかかわらずである。JRになってからは消費税関係以外の値上げはしていないから、いかに国鉄が高かったか分かる。
 とりあえず、候補は二つ。新横浜〜(地下鉄)〜あざみ野〜(バス)〜新百合ヶ丘のルートか、菊名〜(東急)〜横浜〜(相鉄)〜小田急のルートである。双方とも捨てがたいルートだ。残念ながらバスの時間は分からないので、「駅すぱーと」を持っている友人にメールをして、あざみ野〜新百合ヶ丘の時間を調べてもらう。最近では、バスの時間も「駅すぱーと」に入ったようだ。便利になったものである。
 両ルートを比較した結果、やはり、時間、運賃ともに有利な後者のルートを使うことにした。忙しい中、調べてくれた友人には申し訳ないが…。
 小田原からは、箱根登山鉄道で箱根湯本へ。箱根湯本からは元箱根乗り継ぎで、沼津へ。沼津からは松崎行きバスで、土肥へ向かうことにする。沼津から土肥へは、伊豆箱根鉄道の高速船「こばるとあろー」と、東海自動車の特急バスがある。東海自動車の方が時間はかかるが安い。「こばるとあろー」は遅れた際の予備手段として取っておいて、東海自動車のバスで行くことにする。
 駿河湾フェリーの到着する清水港のすぐ近くには、波止場フェルケール博物館というバス停がある。ここからは清水駅、新清水駅経由の新静岡行きの静鉄バスが出ているはずだ。
 こうしてルートは決まった。決行日は2002年12月29日である。

横浜〜静岡 JRの無い旅

菊名→横浜

 トップランナーは、菊名駅7時44分発、東急東横線の急行、桜木町行きである。東急東横線の急行は、別名「隔駅停車」と呼ばれるほど停車駅が多く遅い。ただ、菊名〜横浜間だけは例外で、途中4駅をノンストップである。東白楽から先は、あと1年あまりで地下化されてしまう区間である。わずか6分で、乗換駅の横浜へ到着。初めて通る、そしてもう二度と通ることが無いであろう東急から相鉄への連絡口を通って相模鉄道ホームへ向かう。

横浜→海老名

 続いては、7時57分発、相模鉄道の急行海老名行きである。ホームに行くとまだ7時53分発の各駅停車が発車していなかった。各駅停車の発車を見送って急行に乗車。
 急行は二俣川まで停車しない。途中の星川で先ほどの各駅停車を追い越す。上り線には、JRのE231系をOEM生産した10000系が見える。非JRにも関わらず、JR仕様の車両とすれ違うのは不思議な感じがする。しかし相鉄は駅が多い。さっきから1分に1駅は通過しているような気がする。
 二俣川から、急行も各駅に停まるようになる。駅の間隔も広くなり、車掌が車内を巡回し始めた。地下駅の大和を過ぎ、車窓に緑が目立ち始めた頃、終点、海老名着。小田急のりばはすぐそばだった。

海老名→小田原

 小田原からは、小田急、箱根登山鉄道を乗り継いで箱根湯本まで向かう。今まで切符は購入せず、パスネットで乗車してきた。が、自動券売機の上の運賃表を見ると、「箱根登山線内はパスネットは使えません。」と書いてある(当時、現在は、小田原〜箱根湯本でのみ使用可)。パスネットで入場して箱根湯本まで行ってしまうとどうなるのだろうか?
 駅員に聞く。
「ちょっと分からないから、そこの券売機で切符を買ってください。パスネット使えるから。」
 そう、海老名駅の券売機は、パスネット使用可なのである。箱根湯本までの切符を購入。今回の旅初めての切符の購入である。
 ホームに入る。各停本厚木行きが行く、特急「はこね」が通過する。急行本厚木行きが行く。2駅先の本厚木行きの列車が多い。ようやく私の乗る8時39分発の急行小田原行きが到着した。10両編成で、すべての車両が小田原まで行くが、前6両は終点まで急行、後ろ4両は、途中新松田で切り離し、以降各駅停車という、分かりにくい編成である。が、考えようによっては、小田原へ急ぐ人は前6両に、途中駅で降りる人は後ろ4両に乗ればいいわけで、速達性のサービスとすると非常に良い。
 ちなみに、海老名でかなり待ったような感じがするが、相鉄を降りてから10分しか経っていない。地方で10分の乗換であれば上々だが、首都圏で10分待つとかなり待った気がするから不思議だ。
 小田急は高架を100kmで飛ばす。厚木ではJRの相模線をまたぐ。向こうはたった4両。このあたりは小田急の天下である。その急行も、本厚木からは各駅に停まる。
 伊勢原を過ぎると田圃も見え始める。富士山が真正面に見える。運転席の後ろにかぶりついて写真を撮っていたところ、同じようにカメラを構える夫婦がいた。真鶴へウォーキングに行くらしい。うちの父母も、最近休日に歩きに行くことが多い。はやりなのか。
 渋沢を出ると駅間距離が長くなる。このあたりが神奈川県東部と神奈川県西部の境なのか。
 新松田で後ろ4両を切り離し。前6両は、再び急行として終点小田原を目指す。後ろ4両は引き続き各駅に停まっていくことになる。静岡まで行かねばならぬ私は先を急ぐので、前6両に乗る。自動解結装置が付いているらしく、切り離し作業らしきものも行われないまま、後ろ4両を置いて発車。9時20分、定時に小田原着。

小田原→箱根湯本

 小田原からは箱根登山鉄道に乗り換える。9時25分発強羅行きは11番線からの発車、箱根登山鉄道の車両で3両編成。強羅行きはこの9時25分発が午前中の最終列車で、このあと、夕方までは箱根湯本で乗り換えとなる。箱根湯本行きは小田急の車両で運転されるため、箱根登山鉄道の車両は夕方まで小田原に来ない。11番線も夕方までお休みである。
 小田原を出ると、3線区間に入る。箱根登山鉄道のレール幅は新幹線と同じ1430ミリ、一方、小田急のレール幅はJRと同じ1067ミリである。箱根登山鉄道でも、小田急の車両が乗り入れてくる小田原から箱根湯本だけは、3線区間となっていて、ゲージの異なる車両が乗り入れられるようになっている。
 10分ちょっとで箱根湯本到着。

箱根湯本→元箱根

 ここまで鉄道だけでやってきたが、ここから先はバスとなる。箱根登山バスで元箱根へ向かわねばならないのだが、ルートは二つある。ひとつは国道1号を登ってゆく箱根町行き、もう一つは、旧東海道を登ってゆく元箱根行きである。どちらでもいいから早く出る方へ乗りたい。バス停の時刻表を見比べると、「JR時刻表」では途中の畑宿止まりとなっていた9時45分発が、休日は元箱根行きとして運転されるらしい。国道1号の方は、自転車で二度も登ったことがあるので、せっかくだから旧道経由で行くことにする。
 旧道経由の元箱根行きは、箱根湯本駅前に面したバス停1番のりばから出る。バスは停まっていたが運転士がいない。どうしたものかと思っていたら、発車時刻直前になって、どこからか現れた。観光バスタイプのバスだが、冬休みで箱根へ向かう乗客は多く、立ち客まで出た。
 今登ってきた箱根登山鉄道に沿って、三枚橋まで逆に下ってゆく。そこで右折し、早川を渡ったところからが旧東海道である。突然道幅が狭くなり、激しい登り勾配になる。道幅が狭い上にマイカーで箱根へ来る連中のせいで道路は渋滞し、なかなか前へ進まない。箱根はバスが唯一の公共交通機関なのだから、バスが定時制を保てないと困る。マイカー規制も考慮に入れて欲しいところだ。運転士に聞いたところ、元箱根まで50分ほどかかるだろうとのこと。
 うとうとしていると、いつの間にか畑宿を過ぎ、甘酒茶屋に来ていた。かつて、東海道を徒歩で越えた際の休憩場所であり、現在も営業している店があり、観光名所となっている。坂は下りに変わり、畑宿入口で国道1号と合流。10時20分頃、無事、元箱根に到着した。

元箱根→沼津駅

 元箱根の、その名の通り朝7時から夜11時までしか開いていないセブンイレブンで昼食を仕入れる。このセブンイレブンは自転車旅行で二度もお世話になっている。特に、二度目の東海道走行の際、雪の残る箱根路で足を攣ってしまい、やっとのことで元箱根まで来たときに、ここで食べたカップ麺の美味かったことは印象に残っている。
 ここからは土肥港まで、東海自動車グループのバスに乗る。東海自動車の2000円車内回数券を1冊と1000円車内回数券を1冊購入する。それぞれ2400円分、1100円分使える。他社の同種回数券と比較すると2000円車内回数券の割引率は破格だ。
 10時50分、元箱根行き沼津登山東海バスで出発する。沼津登山東海バスとはへんてこな会社名だが、平成14年10月1日に、沼津東海バスと沼津箱根登山自動車が統合されてできた会社である。運転士さんによると、両社とも小田急系列の会社で、沼津地区では乗客を取り合っていたらしい。沼津地区は、富士急系列の富士急シティバス、西武系列の伊豆箱根鉄道もバス事業を行っており、4社が乗客を取り合う激戦区である。同じ系列で争っている場合ではないということで、このたび2社が統合されたのである。とは言っても、新会社の沼津の車庫は、沼津東海バスの車庫であり、実質、箱根登山バスが東海バスに乗っ取られた形に近い。運転士さんは、元箱根登山バスの方なので、苦い思いをしていることだろう。なお、元箱根から沼津駅の路線は、元箱根登山バスの路線であり、このバスのカラーも箱根登山バスカラーのままである。
 箱根町のバスプールで、中途半端な場所に停まっている箱根登山バスの回送バスに行く手を阻まれる。運転士は苦い顔をするが、本気で怒っているように見えないのは、元同じ会社だったからだろう。
 関所跡で他のお客さんが降りてしまい、貸し切りとなる。乗ってくる客もいないまま、静岡県に入り、箱根の山を下りだす。右手には富士山が更に大きく見えて綺麗だ。お客さんがいないため、放送も適当に送っていたためか、見晴学園でお客さんが乗ってきたときには、整理券番号がずれてしまっていた。
 国道1号が三ツ谷バイパスとなった区間では、このバスは旧道を通る。緑が丘からは国道を外れ、三島の街へ入ってゆく。バス停は、元箱根からここまでずっと箱根登山バスタイプのものだったが、三島の街へ入って東海バスタイプのものに変わった。
 三島駅で私以外の全員が降りる。運転士さんも三島駅止まりの気分になっていたようで、料金表の系統番号をリセットしてしまった。私が残っていたので運転士さんも気付いたが、
「どうせ通しで乗るのは私しかいないから、三島駅から沼津駅の系統にセットしちゃえばいいじゃないですか。」
と私がいうと、あっさり三島始発の系統番号をセットした。整理券も1番に戻り、元箱根発のバスであることを示すものは何もなくなってしまった。乗客として、東海バスの社員の方が乗ってきた。
 本町まで元来た道を戻り、旧東海道を沼津へ向かって走る。本町で観光バスタイプのバスとすれ違う。
「このバスが次に乗るバスだよ。」
と言われる。三島と土肥港、松崎を結ぶバスである。
 三島駅までは箱根の山を下る観光路線の性格が強かったが、三島からは同じ東海道でも、普通の市内を走るバスという感じになる。先ほど乗ってきた東海バス社員の方が、車庫前のバス停で降りてしまい、再び貸し切りとなる。グリーンの富士急バスカラーのバスとすれ違うようになると、終点の沼津駅である。

沼津駅→土肥港

 小田原からここまで、ほぼ東海道に忠実に沿ってきたが、ここからは東海道をそれ、特急バスで伊豆半島へ向かう。沼津ではしばらく時間があるので、郵便局に寄ってお金をおろしたり、友人に電話をかけたりして時間を潰す。ふとバス停を見ると、先ほど本町で見たバスと同じタイプのバスが、行き先に「松崎」と表示して停まっている。どうも発車時刻を勘違いしていたようだ。特急松崎行きは12時50分発だとばかり思っていたが、時刻表を見直すと12時30分となっている。先ほど購入した回数券が使えることだけ確認し、慌てて乗車する。食事が買えなかった。
 どこの会社のバスかも確認しないまま乗ると、すぐに発車。松崎行きの特急バスで「スーパーロマンス号」というらしい。放送が入った。
「次は、三島駅でございます。」
 全然確認していなかったのだが、この特急バスも三島駅を通るのである。わざわざバス代を払って、三島駅と沼津駅を往復したことになる。先ほどのバスの運転士さんが、三島駅で全員降りたと勘違いした理由も分かった。このあと土肥港へ行くと言って乗っていたので、乗り換えバス停である三島駅で当然私も降りたと思っていたのだろう。
 先ほど見た東海バスの車庫の横を通り、ますますブルーになる。昼食もいつ買えるか分からないし…。
 うとうとしていたら、修善寺駅へ入るところだった。今回は敢えてバスを選んだが、急ぐのであれば、三島駅から修善寺駅まで、伊豆箱根鉄道の電車で来ても良い。更にお客が増え、満席になった。
 船原温泉を出ると国道136号のバイパスを使って峠越え、伊豆半島の西海岸へ向かう。山は霧がかかっている。
 土肥からは、駿河湾フェリーに乗って清水港に向かう。運転士さんにその旨聞くと、最寄りバス停は土肥ではなく土肥港だという。バスは土肥の町に入り、馬場、中浜、土肥と停まる。土肥の次が湯の川で、その次が土肥港バス停であった。元箱根で購入した回数券で運賃を支払い降りる。乗ったときに確認できなかったバス会社を確認、西伊豆東海バスであった。

土肥港→清水港

 降りてからバスの進行方向にしばらく歩くと右手にフェリー乗り場が見つかった。きっぷ売り場で清水港までのきっぷを買う。そしてフェリーに乗り込む。船と同じ甲板から乗船する。
 沼津で食事ができなかったので、船内を歩き回る。小さな船だが幸い、売店や自動販売機は充実しており、焼きめしを購入して食べる。出航して間もなく右手に富士山が見えてくる。小田急以来、何度となく見た富士山が、窓の外いっぱいに見えてくる。残念ながら雲が少しかかってしまっている。船は思いのほか早く、やがて右手にさった峠が見えてくる。東名高速道路、東海道線、国道1号が山に張り付いている。左手に松原が見えてくるといよいよ清水である。クレーンやコンテナが並ぶ、港の景色になってきた。
 ここで、別の船の出航待ちのため多少遅れるという放送があった。今日は静岡までなので構わないが、もっと先まで予定を立てていた人にとっては困る話である。甲板に出てみると、ボロい外国船らしき船が、フェリーの左側をすれ違っていった。多分その船が港を塞いでいたのだろう。フェリーは旋回して清水港に着いた。10分ほど遅れた。
 この船は前にも述べた通り、昔は土肥港と田子の浦港を結んでいた。船を下りてからよく見ると、船の脇にかかれたTagonouraの文字をShimizuに書き直した跡が見える。

波止場フェルケール博物館→新清水

 港をとぼとぼ歩いて港の前の道路に出ると、すぐにバス停は見つかった。清水港の最寄りバス停、波止場フェルケール博物館である。新静岡行きのバスに乗れれば良いのだが、バス停の接近表示の新静岡行きの欄はすでに終車と表示している。すでに年末で休日ダイヤになっているようだ。休日ダイヤでは新静岡行きバスは朝しか走っていない。
 ほどなく清水駅行きのバスがやってきた。バスには「しずてつジャストライン」と書いている。あとで調べると静岡鉄道のバス部門が分社した際、単純に静鉄バスなどとせず、しずてつジャストラインという会社名にしたようである。
 バスに乗って落ち着く間もなく、新清水に到着。運賃は100円であった。最近はやりのワンコインバスなのである。

新清水→新静岡

 非JRの旅の最後をしめくくるのは再び鉄道である。新清水と新静岡の間は、バスが無くても静岡鉄道静清線が結んでいる。新清水の駅はバス停のすぐ前にひっそりとあった。ちょうど発車するところだったので、慌てて切符を買って乗車する。国鉄時代は東海道線の本数が少なく、静岡と清水を結ぶメインルートだったが、JR化前後から東海道線の本数も増え、安くて早い東海道線が静岡鉄道の経営を圧迫している。
 新清水を出ると、すぐにJR東海道線と併走する。昔、この区間の東海道線で脱線事故が起こった際、臨時にポイントを設置して、静岡鉄道の線路を使って国鉄の列車を運転したのは有名な話である。草薙を過ぎ、JR東海道線をオーバークロスする。右手を見ると今回の旅で何度も見てきた富士山が、夕日に染まっていた。
 新静岡駅到着。静岡鉄道の静岡側のターミナルである。JRや静岡駅を使わないとどうも静岡に来た気がしない。間違いなく静岡に来ているのだが、逃避行でもしてきた気分になる。

資料


会社 種別 乗車駅・停留所
時刻
降車駅・停留所
時刻
運賃・料金
列車 東京急行電鉄
東横線
急行 菊名
7:44
横浜
7:50
150円
列車 相模鉄道
相鉄本線
急行 横浜
7:57
海老名
8:29
300円
列車 小田急電鉄
小田原線
急行 海老名
8:39
小田原
9:20
440円
列車 箱根登山鉄道
鉄道線

小田原
9:25
箱根湯本
9:38
300円
バス 箱根登山バス
畑宿・旧街道線

箱根湯本
9:45
元箱根
10:20
930円
バス 沼津登山東海バス
元箱根
10:50
沼津駅
12:07
1200円
バス 西伊豆東海バス
西海岸線
特急
スーパーロマンス号
沼津駅
12:30
土肥港
14:20
2140円
フェリー 静岡観光汽船
高速カーフェリー駿河

土肥港
14:40
清水港
15:45
1500円
バス しずてつジャストライン
三保山の手線

波止場フェルケール博物館
16:01
新清水
16:06
100円
列車 静岡鉄道
静岡清水線

新清水
16:12
新静岡
16:32
290円


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