3月13日(尾道→今治)
 早いもので、もう九州を離れなければならない。長い時間をかけて自転車で走ってきた割には、わずかな滞在時間だった。
 荷物を整理すると、とても持ちきれないので要らないものを浦栃邸へ宅急便。輪行バッグを持って博多駅へ行く。宿を出たときには宅急便の段ボールと輪行バッグを持っていたわけで、我ながらよくやると思った。
 ひかり352号(レールスター)で広島へ。私が3日間かけて走った距離を1時間15分で走ってしまう。あっけないものだ。朝早かったので寝続ける。JR西日本の看板列車だけあって快適。
 広島からはこだま610号で三原へ。三原で下車。在来線に乗り換える。115系で尾道へ。

 今日は自転車旅行の最終日。尾道からしまなみ海道を渡り四国上陸をして自転車旅行を締めくくる。これが終われば愛車あさお2号は当分の間お休みである。
 尾道駅で自転車組み立て。組み立て時にネジを一つバカにしてしまったので分解出来なくなった。どこかでネジを交換してもらわねばならない。
 現在、四国最長片道切符の旅行をしているSWAさんに連絡。予讃線での乗車列車を確認する。いしづち26号である。
 9時35分。尾道駅を出発。国道2号を東に走る。ちょうど2月28日に雨に降りだされたあたりを逆に走っている形となる。
 商店街らしきところの自転車屋でネジの修理を依頼。忙しいと言われて断られる。同じ商店街のバイク屋に行くとタダでネジを交換してくれた。
 目の前に尾道大橋、新尾道大橋が見えてくる。自転車が渡れるのは尾道大橋。アプローチを登る。
 パンフレットなどには、「尾道大橋は歩道が狭く危険ですので、向島へは渡船をご利用ください。」とあり、ほとんどのサイクリング用のパンフレットが向島からの案内になっている。それでは本州と四国が地続きになった意味が無いではないか。危険かどうかはオレが判断するとばかりに渡ってみるとなんのことはない。普通の橋である。天竜川や岡山バイパスの方がよっぽど危険である。気にかける必要なし。
 向島に渡ってすぐ料金所。颯爽と窓口に金を渡そうとすると、自転車は脇の料金箱に入れてくれとのこと。賽銭箱状態。
 渡った証拠が欲しいので領収書を出して欲しいと言うと出してくれた。結局窓口に行くことになる。通行料10円。ちなみにしまなみ海道全線を走ると、通行料510円が必要になる。
 島の部分では自転車は西瀬戸自動車道を走れない。しまなみ海道は自転車でも走れますと言っても実際西瀬戸自動車道に沿って走れるのは橋の部分のみ。島内は一般道を走らねばならないのである。
 向島の一般道に入る。一応サイクリングロードというのが設定されていて、これに沿っていけば今治まで行けそうなので案内に沿って行く。島内はデオデオあり、コンビニありの、本州と全く変わらない感じ。つまらない。普通に島を走っていると、四国に向かっていることすら忘れる。
 サイクリングロードは向島を半周するような形となっている。今回は渡らない向島大橋の下をくぐりしばらく行くと、次の橋、因島大橋が見えてきた。が、サイクリングロードは橋の下をくぐり、1km以上、橋が見えなくなるまで行き過ぎる。
 しまなみ海道の橋はどれも数十メートルの高さがある。最短距離で橋まで結ぼうとすると橋の前後はかなりの勾配となる。それを防ぐために、橋の前後にアプローチと呼ばれる部分があり、距離を稼いで勾配を緩くしている。アプローチは場所によってはループ状になっていたり、蛇行していたりして、見事に距離を稼いでいる。そのおかげで勾配はママチャリでも乗ったまま走れるほど緩い。
 緩いのはいいのだが、当然時間がかかる。因島大橋が見えなくなってから実際に因島大橋を渡り始めるまで、普通に自転車で走って10分ほどかかる。アプローチは人、自転車、原付と車種別に設定されている場合もあるのだが、当然自転車がもっとも長い距離を走ることになる。箱根を越えてきた私にとっては面倒なことこのうえない。
 因島大橋は自動車が上、人と自転車と原付が下の二階建て構造。ちょうど瀬戸大橋の鉄道のような感じで檻の中を走っているみたい。眺めは良くない。通行料50円なり。
 アプローチを下って因島へ。この因島でミスをした。サイクリングロードの分かりにくい曲がり角を見落とし、サイクリングロードから外れてしまったのだ。かなり外れてからガソリンスタンドで聞いて、外れていたことが分かった。復帰。3キロほど損した。
 次は生口橋。今度は橋の一番左側が自転車レーン。すぐ左には瀬戸内海が見える。橋を渡り終えると生口島。通行料50円なり。
 生口島内も海辺を走る。右手の海には瓢箪島という無人島が見える。ひょっこりひょうたん島のモデルになった島らしい。何度も撮影するが、本物のかわいらしさを撮れないのが残念。やがて世界最長の斜張橋、多々羅大橋が見えてくる。しまなみ海道中最後に完成したうちの1本である。この橋が広島県と愛媛県の県境。海峡としては来島海峡の方が広いが、潮の流れの関係で、ここが県境になっているらしい。通行料100円。
 多々羅大橋も一番左側が自転車レーン。海を見下ろしながら走ることになる。多々羅大橋から大三島へ下ったところが道の駅多々羅しまなみ公園。今渡ってきた多々羅大橋が見える。道の駅で休んで、aito氏へのお土産を購入。
 再び走り出す。愛媛県へ入ったことで、サイクリングロードの標識のフォーマットも変わる。管理事務所が違うのだろう。大三島の東岸に沿って南下する。しかしこの大三島最後の2kmがすごかった。道は細くミカン山の中を登る坂道。中山峠を思い出す。しかも工事中だとかで砂利道。つくば〜博多と尾道からここまで走ったけど未舗装のところを走ったのは初めて。山を下ったところで本州四国連絡橋のうちもっとも古い大三島橋。吊り橋や斜張橋が多い本州四国連絡橋において唯一のアーチ橋である。開通は昭和54年ですでに私の記憶に無い。実際橋も古さを感じる。50円なり。
 下ったところが塩で有名な伯方島。ローソンでおにぎりを購入し、軽くエネルギー補給。しばらく走るとしまなみ海道二カ所目の道の駅、道の駅伯方がある。休憩。
 母親にお土産にするため塩を購入。正直言って塩はお土産に向かない。重い割には安く、あまり喜ばれそうにないからだ。とは言っても伯方島で塩意外も思いつかないし、これだけバックアップしてもらって親に土産一つ買わないのは悪いので購入。サイクリングロードが伯方島を通るのはわずかで、すぐに次の伯方大島大橋にかかる。
 伯方大島大橋は2連の橋。伯方橋と大島橋があり、その間に見近島という島が踏みつぶされたように存在する。備讃瀬戸大橋の双子島みたいなものである。見近島には降りられるようになっていたが降りずに進む。50円なり。
 しまなみ海道中最後の島は大島。その名の通り大きく、16kmも延々と島内を走ることになる。サイクリングロード中、陸上部最高地点も大島内にある。
 しまなみ海道をここまで走ってきてだんだん悟ってきた。しまなみ海道は本州四国連絡橋のうち、唯一自転車が通れるルートとして、完成時には正直喜んだ。だがしかし、今まで走ってきて実体が分かった。島と島を結ぶ生活道路だから自転車も通れるだけなのである。
 一番東の明石海峡大橋+大鳴門橋は、橋の長さも長く、神戸市、淡路島、鳴門市がそれぞれ生活圏として独立しているため、生活道路とはなり得ない。
 瀬戸大橋も、ほとんどが橋であり、陸上部はほとんど無い。島から島へ渡っていく形になっているが、島の生活道路ではなく、実際車でも降りられるのは与島だけである。
 一方しまなみ海道はルートのほとんどが島の陸上部。車で降りられない島は見近島と馬島のみ。この両島も徒歩なら降りられる。つまり島と島を結ぶ生活道路がたまたま本州と四国をつないだ形であると言った方が正しい。橋はすべて開通したが西瀬戸自動車道は未だ未完成部分があり、全線通して利用する人がどの程度いるのか疑わしい。
 だが私にとってみれば、鉄道も無く自転車も通れない明石海峡大橋+大鳴門橋は連絡橋とは認められない。やはり自転車や鉄道あっての橋でありトンネルである。
 今までの島は海岸部をまわるだけで大きな高低差は無かったが、大島島内のみは内陸部を突っ切る形となっている。このためそれなりのアップダウンがある。しかも大島島内は西瀬戸自動車道が開通していないため、車と戦いながらの山越え。「オレ、四国に向かって海を渡っているんだよなぁ。」と感じながらも山越えをする。
 下りに入り、夕日とともに目の前に四国、そして最後の来島海峡大橋が見えてきた。ついに自分の足で、本州から四国まで来たのである。
 下りきって一度海岸に出てからアプローチを登る。このあたり思いっきり位置エネルギーの無駄をしている気がするがまあそういうルートなのだ。来島海峡大橋は非常に高い位置にあるため、自転車用のアプローチは細い高架橋となってループを描いており、まさに空中散歩といった感じである。すでに時刻は16時半になっており、夕日が海面に反射して非常に綺麗だ。
 来島海峡大橋はしまなみ海道最大のハイライト。全長約4キロ。下が国際航路となっているため目もくらむほど高い。船がおもちゃのように見えると言ってもいいすぎではない。
 途中の馬島に料金所がある。通行料200円。ちなみに料金所があるのは尾道大橋と来島海峡大橋だけであとは賽銭箱である。領収書をもらったあと、エレベーターで馬島に降りてみる。島に降りたところでなんということは無いのだが、よくもまあこんな巨大な建造物を作ったものだと驚く。来島海峡大橋を降りるともう四国。朝本州にいたのが嘘のようである。
 ちなみにこれで私は本州四国連絡橋のうち、大鳴門橋を除くすべてを渡ったことになる。今夜さらに二度目の瀬戸大橋を渡るというおまけ付き。
 国道317号に入り、東に向かって走行。今回の自転車旅行の終点、今治駅が見えてきた。1ヶ月弱に及んだ長距離自転車旅行は終わり。愛車あさお2号とも当分お別れだが、別れを惜しんでいる暇は無い。1時間ちょっとの間で自転車を解体し、切符を購入し、いしづち26号に乗らねばならない。


<写真>
   尾道駅にて
   新尾道大橋と尾道大橋
   尾道大橋上
   向島大橋
   因島大橋1
   因島大橋2
   因島大橋3
   因島大橋上
   因島大橋自転車帯からの眺め(檻の中とも言う)
   因島から生口橋を見る
   生口橋
   生口橋(アプローチより撮影)
   生口橋上
   生口橋自転車帯からの眺め
   瓢箪島1
   瓢箪島2
   瓢箪島3
   多々羅大橋1
   多々羅大橋2
   多々羅大橋へのアプローチ1
   多々羅大橋(アプローチより撮影)
   多々羅大橋へのアプローチ2(標識はイノシシ?)
   多々羅大橋上
   多々羅大橋自転車帯からの眺め
   多々羅大橋から水面を見る
   多々羅大橋(道の駅多々羅しまなみ公園より撮影)
   大三島橋
   大三島橋上
   大三島橋自転車帯からの眺め
   伯方橋
   伯方橋上
   伯方橋自転車帯からの眺め
   サイクリングロード高低差
   大島大橋上
   大島大橋
   能島?
   来島海峡大橋
   来島海峡大橋へのアプローチ1
   来島海峡大橋へのアプローチ2
   来島海峡大橋へのアプローチより四国を見る
   来島海峡大橋へのアプローチより水面を見る
   来島海峡大橋(アプローチより撮影)
   来島海峡第1大橋上
   来島海峡第1大橋自転車帯からの眺め
   来島海峡第2大橋上
   来島海峡第2大橋自転車帯からの眺め1
   来島海峡第2大橋自転車帯からの眺め2
   馬島より来島海峡第3大橋を見る
   馬島へ降りるエレベーター
   エレベータより来島海峡第3大橋を見る
   エレベータより馬島を見る
   馬島料金所
   馬島料金所にて
   来島海峡第3大橋上
   来島海峡第3大橋より船を見る
   来島海峡第3大橋自転車帯からの眺め1
   来島海峡第3大橋自転車帯からの眺め2
   しまなみ海道最高地点にて
   来島海峡第3大橋より四国を見る
   アプローチより馬島を見る
   来島海峡大橋へのアプローチ(四国側)
   今治駅にて1
   今治駅にて2